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海外研修

平成27年度 社会福祉施設経営管理者海外研修・調査

海外研修報告

研修期間:2015.9.1~9.11
研修先:ベルギー、オランダ  
報告者:ふじのき寮 M.S

 

Ⅰ 9月2日(水) ベルギー ゲント市

1. ファミリエゾルグ オスト ブランデール (NPO 行政説明)

 ベルギーは、フランダース政府とワロン政府とブリュッセル首都圏の連邦政府があり、

ここの組織はフランダース政府が認可し、補助金で成り立っている「ファミリー・ケア」

を行っているところである。

 (1)ファミリー・ケアの内容

 利用対象者は、認知症を含む高齢者・障害者・貧困者・特別なケアが必要な子供や

その親で、6,000名が利用している。

従業員であるケアワーカーは、1,200名で、買い物・高齢者の身体介護・通院付添・

余暇活動・掃除等である。

(ジェネラルディレクターによる行政説明)

 利用開始は、本人からの申請や病院または、ホームドクターからの紹介である。

そこで、ホームドクターを含むチーム会議が開催され、家族の経済状況や家族内

のケア状況を踏まえ、セクターマネージャーがケアプランを作成し、ケアワーカー

が直接サービスを行う。

利用者のコストは、その方の収入によって異なり、1時間6ユーロ50セント

(約900円)程度が平均負担である。

 

 (2)トレーンングセンター

 フランダースの労働推進局の協力で、失業者・移民・低学歴者等の15歳から

55歳の人たちがケアワーカーになるためのトレーニングセンターである。

1年間600時間の実習があり、その内、300時間のファミリー・ケアの実習もする。

1年間ケアワーカーとして働いたワーカーに対しても6日間の理論教育があり、

その内容は応急処置やケアクリニック等である。

研修生は最後にトレーニングセンター長と面談をして、配属が決まるのである。

 

2. リフライガ  高齢者福祉施設

 ここでは、ディサービス・ショートスティ(10室)・老人ホーム・アシスタン

ト付住居(軽度老人用)171名が生活している施設である。日中は、話の会や

礼拝などさまざまなアクティビティな活動から本人のさまざまな社会問題や心の 

問題も聞く機会も設けている。設備%A

 

3. シント・ヨージェ  障害者福祉施設

 子供から成人までが利用でき、トレーニングセンターと学校の機能をもった施設

である。フランダース政府の補助金で、施設を運営している。障害者のカテゴリー

は成人と子供に分かれている。成人は、ホームケア・ディサービス・入所施設があ

り、自己負担が発生する。障害者が施設を選ぶことがあやふやになっているところ

があり、障害者自身が自己選択できる仕組みを作り出すことが大切と言っておられ

た。子供の場合は、ショートスティ・放課後ディ・不登校児相談支援がある。相談

支援は、直接ワーカーが家 族のもとで聞き取りを行っているのである。そこでは、

子供がどのように感じているのか、子供の主体性を大切にした活動を展開している。

心理学者や理学療法士の力を借りることもあり、長い時間をかけてゆっくりとケア

をしている。また、ここはレンガ積み・左官屋・大工等の育成するための専門教育

も行っている。

 (自閉症児の学習教材)

 

 

Ⅱ 9月3日(木) ベルギー ゲント市

4. キンデルオプファング シント リーフェンスポールト 児童福祉施設

 いわゆる託児所である。1日74名の児童が通っている。その中で、特別な障害を

持った2歳半~12歳までの子供の初頭教育を行っている。その障害とは聴覚障害

児・言語障害児・自閉症児などである。障害児から普通の子供まで通っている為、

統合保育を行っている託児所である。徐々にこのような統合保育を増えてきている

という。

 

5. ゲント市 社会供給部 住民/福祉課

 ゲント市には、現在3つの方向性がある。①サービスの提供②統括した誰でも

アクセスしやすいように開かれた行政③一般市民から理解を求める統合保育であ

る。そこで、障害者や高齢者などだれにでもやさしい「ユニバーサルデザイン」

をいち早く取り入れている。また、障害者と健常者との平等を意識して、社会参

加の機会を持ってもらうように努力しているという。過去には、大勢の障害者の

方をひとつの場所に集め、医学的に働きかけていた時代があったが、現代は、住

み慣れた地域で普通に生活でように働きかけている。

 また、5年毎に現在の政策について、会議が開かれている。そこでは、今なに

をすべきか?なにを求められているのか?を検討されている。そこには、「近所の

方が近所を助けるプロジェクト」を立ち上げ、地域単位での絆を深めていくこと

が、その中で住む障害者や高齢者の住みよい環境を整えているのである。

 

Ⅲ 9月7日(月) オランダ ユトレヒト市

6. ユトレヒト市役所 福祉部局

 2015年の1月1日にAWBZ:特殊ケア一般法の改正されたところである。

オランダでは、高齢者ケアは国の政策であったが、毎年の経費が増加したことで、

国と保険会社が検討し、分担の改善がなされた。当初国が行っていたことが地方

自治体に移行し、より一層市民の声が届く政策をめざしている。又、どのような

ケアが必要なのか?どのような機関が必要なのか?その機関のまわりに同様な組

織を作ればいいのか?2007年より、議論され、改正にこぎつけたのである。

 (ユトレヒト市政説明)

 次に、人口335,000人のユトレヒト市は、18チームの地区チームを定着させた。

日本でいう「包括支援センター」である。自分の事は、自分で行い、家族・友人・

近隣の人が共に支え合える仕組みがある。この地区チームが地域で住む高齢者や障

害者を支えている。ホームドクターがコーディネートの役目を持っている。

また、青少年法の中で、「0~6歳プロジェクト」という政策がある。言葉の教育

を中心に落ちこぼれの子供を造らないように義務教育前に子供を託児所に入れて学

ばせている。そこには移民や難民の子供も例外でなく、補助金を出し、オランダ語

を教育し、将来の労働力を確保することが目的である。

 

7. マリア オード フィンケンフェーン  高齢者福祉 介護センター

 (マリア オード フィンケンフェーンにて) 

高齢者福祉施設で、身体障害者61名・認知症136名(内71名GH)ディケア86名

の利用で、介護者はパートが多く400名である。国の方針で、2013年より、高齢

者施設を閉鎖している。在宅生活重視の考えで、元気な高齢者は、家庭で過ごし、

家族の支援や友人・近所の支援を受ける「ファミリー・ケア」を推進している。

介護が困難になるとケアハウス(介護施設)に入る。その次は、認知症のGH・行

動に問題がある高齢者のGH・身体障害者の持続的介護のGH・リハビリのGHの

4種類のGHのいずれかに入居する。

 オランダでも日本と同様に介護度により、GHの入居が決まる。10段階で2・

4・6・8は身体障害者、3・5・7・9は精神的認知症である。GHは、介護度

6以上なければ入居できないことから、認知症の高齢者は、介護度7以上で入居で

きる。その介護度に満たない人は在宅で、ファミリー・ケアを受けることになる。

ここのGHは、待機者7名で、1~2年待ちとのことである。

 

Ⅲ 9月8日(火) オランダ ユトレヒト市

8. キンデルパング ユトレヒト マリバン 児童福祉施設 託児所

 子供の自己開発を大切に育て、品質の高い保育を行なっている託児所である。こ

この保育士は、全員教育学を学んでいる。利用料は1日67ユーロ。託児所では、

ヨガ・クラッシック・温かい昼食を出している。他の託児所を違う所は、一般家庭

の居間にいるような家具などで環境を整えていた。また、ここの託児所に子供を預

けていた若い親たちは、パートタイマーの仕事をして、利用料が高額にならないよ

うに工夫をしている。今後は国が、より補助金を出すことで、親たちが仕事をしや

すくし、それに伴い国の収入(納税)も増える。結果的に国が潤うことに繋がるこ

とになる。

 

9. デムースタン マールスホークンウィーズ 障害者福祉施設

精神的・身体的・知的に障害を持った18歳~50歳までの利用者が1日20名、

週70名が利用する施設である。日本でいう「就労継続B型」のような通所施設で

ある。広大な敷地の中で、いろんな野菜を育て、敷地内で運営しているレストラン

の食材に充てている。また、即売品や1年を通して購入してもらう顧客も確保して

収益を上げている。国からの補助金は減額になり、レストランをより大きくして、

収入増を考えている。利用期限は半年で、将来は一般就労を目指して、就労支援を

受けている。しかし、有給の仕事に就ける利用者は、10%という。

施設では、65名のケアワーカーと25名のボランティアが配属されている。土・

日曜日もレストランを営業するが、お客が大変多く、障害者の人達ではパニックに

なる為その2日間は専門のスタッフで営業している。利用者のレストランに勤務す

るスタッフの方は笑顔が素敵で、おいしい昼食をいただきました。

 (レストランで働く利用者)

 

最後に

   研修前では、欧州の国民の「高負担」が「高福祉」を当然のようにもたらして

いるものと考えていましたが、実際、研修先の行政説明や現場の声を聞くことで、国

民性を生かした政策により、国民の将来が保障されていることが理解できました。

 日本の「高負担」(消費税増税)で「低福祉」の課題がどこにあるのか考えさせられ

ました。また、ヨーロッパの難民・移民問題には、他人事でない気持ちが生まれました。

今後も難民問題とそれを取り巻く、欧州の福祉の動向を見守っていきます。

 また、欧州の文化・建築・絵画に直接、触れることができ、大変貴重な体験をさせて

いただきありがとうございました。また同行して頂いた景山晃団長・城間寛輝福団長を

はじめ団員の皆様には楽しく過ごさせて頂き感謝しています。団員の方々との意見交換

も大変勉強になりました。ありがとうございました。

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