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海外研修

平成25年度 民間社会福祉施設等職員海外研修・調査

海外研修報告

研修期間:2013.9.7~9.21
研修先:ニューヨーク、サンディエゴ(行政機関2か所、介護施設10か所)  
報告者:ホームあさぎり台 H.H 


Ⅰ)ニューヨーク市視察
【近年の課題】
  近年、高齢者の増加に伴い、高齢者の貧困が問題になってきている。特にニューヨーク
 市は“人種のるつぼ”といわれる通り人種が多種多様で、高齢者の45%が英語を話せない
 状況にあり、移民の高齢者に貧困が多くみられている。
  ニューヨークで高齢者支援の中核となっているのがシニアセンターである。高齢者の支援
 として一番予算を使用している機関であり、50人位~400人位の高齢者をケアする施設と
 して247ヶ所設置している。栄養サービスをメインとしていて60歳以上なら誰でも利用
 できる。現在、1日大体2万5千人の人が利用している。内容は主に昼食の提供であるが
 プログラムによっては、朝食、夕食の提供をしているところもある。


①Asian Community United Society(アジアン・コミュニティ・ユナイテッド・ソサエティ)
  当初はNPOとして活動していたが、現在は営利法人として活動しておりニューヨーク在住
 のアジア系の高齢者ケアの様々な推進活動を行っている。ニューヨーク市では近年になり
 アジア系の移民が増加してきている。中でも中国人の増加が目立っている。2000年から
 2011年の10年ほどの間に65%増加している。この地区では中国人の高齢者の方の為に
 活動をしており、ニューヨーク市ブルックリンには3ヶ所の高齢者のシニアセンターを運営
 している。食事の提供がメインのサービスで、他に英語クラスや、ITクラスなど教育的なプロ
 グラムがある。

   

 

②Carnegie East House(カーネギー・イースト・ハウス)
  施設種別はアシステッドリビング(軽介助を要する高齢者向け住宅)で、非営利団体が運営
 しているため、立地等を含めたサービス内容に対し、比較的安価な料金設定となっている。

 料金は居室のタイプにより異なってくるが5,050ドル~6,500ドル/月の範囲である。
 またこの料金には水道光熱費や一部のサービス(週3.5時間未満)が含まれているが、パー
 ソナルケアが週3.5時間以上必要な場合などには追加費用が掛かる。また医療費等は状況に
 応じてメディケア(アメリカの高齢者用医療保険制度)の利用も可能であるが実費となる。
  アメリカにおける高齢者施設を運営する法人の多くは営利法人であり、チェーン展開をして
 いることが多く、この施設と同等のサービス提供を行う場合、その費用は更に2,000ドル
 程度高額になるとのことである。

 

③Sunrise at Mill Basin(サンライズ・アット・ミル・ベイシン)
  営利団体が経営する、メモリーケア(認知症ケア)の定員35名の入居施設である。
 同一敷地内に、アシステッドリビング定員87名が併設されている。
 メディケア、メディケイドの対象施設ではなく、4500ドル~7000ドル/月の支払い(部屋の
 広さなどにより異なる)を個人負担で支払う。その他サービスやケアを受ける毎に課金される
 システムで、個人加入の養老保険から支払いを行っている入居者もいる。つまりは、富裕層が
 自費で利用する施設である。薬のみメディケア制度を活用している入居者もいる。
 多目的ホール、ヘアサロン、テラスなどに加え、アクティビティの部屋、家族と共に過ごせる
 部屋、スパ(有料)なども設置してある。食堂からはジャマイカ湾をのぞめるため「クルーズ
 に乗っているように、食事を摂れる」環境にある。
  特色として、回想法を中心としたアルツハイマーのケアプログラムがあること、大学と連携
 したスタッフの教育体制が整っていること、看取り支援まで行っていることが挙げられる。

  

 

Ⅱ)サンディエゴ市視察
【近年の課題】
市の人口は約130万人で、構成は白人約54%、ヒスパニック系約24%、アジア人等約13%、
 黒人約9%であり米国で最も多民族な地域の1つである。また基地があり、退役軍人の街
 でもある。
  ここサンディエゴでは、高齢者の虐待、特に無視の虐待が多かったため、1972年、行政
 監察法が発足し、5人の常勤、5人の非常勤、そして75人のボランティアスタッフによって
 1,300人の高齢者を対象にしたセーフティネットが遂行している。この法令はサンディエゴ
 だけでなく現在はアメリカ全土にあるが、先駆的な役割を担っている。高齢者がどういう形で
 安全が守られているかを行政だけで把握するのは難しく、地元警察・弁護士等の公的機関
 や地域・家族・友達等と連携し安全や自立支援を地域チームとしてサポートしている。特に
 危険が及んでいるという人を対象に、その人に何が必要かをチームでカンファレンスし、
 プログラムを検討している。「高齢者の安全がどうしたら守られるか」「今まで通り在宅で
 自立した生活を送るにはどう支援したらよいか」等、健康面・身体面での安全予防策や虐待
 等についての調査・指導をしている。


①Adult Day HealthCare Center Neighborhood House Association
                (アダルト・デイヘルスケアセンター・ネイバーフッド・ハウス・アソシエーション)
  非営利法人が運営するデイケアセンターで、利用料は1日88ドル。この地域に在住する
 人種はほとんどがヒスパニック系(メキシコ人)となり、その他黒人やフィリピン人が混在し
 ている。利用者のすべてが認知症高齢者である。低所得者層が対象であり、皆が何らかの保険
 を使って利用している。(※メディケイド80% 退役軍人保険18% 民間保険2%)
  この施設では2年前に閉鎖の危機があった。原因は収入の不足であり、政府の援助が全く
 ないこと、保険会社による支払い方法の変更で減収となることが理由である。
 メディケイドにあたっても法改正が行われ不安定な状況のため今後の不安は隠せない。
 しかし、職員の方々は利用者のために笑顔の中一所懸命業務に取り組まれており、その
 姿はとても共感が持てるものであった。


②St. Paul’s Villa-Assisted Living Memory Care Program
(セントポール・ヴィラ/アシステッド・リビング、メモリ‐ケア)
  非営利団体が経営する、自立支援を目指す施設(アシステッドリビング)で、1階が介護
 援助の必要な方で定員60名、2階がメモリーケア(認知症ケア)の必要な方で定員60名。
 料金は、1ヶ月4,069ドルから(1日3回の食事とスナック、ケアプランに沿ったケアを含む)
 3年前より、メモリーケアプログラム(認知症ケア)を実施している。利用者が部屋に閉じ
 こもらないように、肉体的にも精神的にもそれらを刺激する楽しい活動を提供し、調理や
 軽い運動教室、生演奏を聴くなど、個別に小さなグループでたくさんの活動を行っている。
 また、安全な環境の中で美しい屋外パティオと静かなリラクゼーションエリアがあり、自由
 に過ごすことが出来る。そのため危険の無いよう施設内にカメラが設置されていた。

 

  


③Coronado Retirement Village(コロナド・リタイヤメント・ヴィレッジ)
  サンディエゴからコロナド・ベイブリッジを渡り、海岸線が一望できるコロナド島の一角
 に立地している営利団体が経営する施設。この地区は元上層部の退役軍人も多く居住して
 いる地域であり、そのため、比較的富裕層の住人が住んでおり、マリリン・モンローなどの
 映画で有名な高級ホテルなど、観光や娯楽施設も揃っている地域である。
 費用はすべて個人負担が原則となっており、メディケアやメディケイド、民間保険等いかな
 る保険も適用外となっているため、入居者の多くは退役軍人やその配偶者で、一般的な世帯
 よりも多くの年金や貯蓄がある方が対象のいわゆる富裕層をターゲットにした豪華な設備を
 整えた高齢者住宅様の施設である。
  基本料金(2,500~6,000ドル)+薬品管理(350ドル)+追加料金(最大1,273ドル)
 となり、基本料金は居室の向きやロケーションによってひらきがあり、スイートルームも
 用意してある。ここの特徴は、ホスピスケアを行っていること。特に専用のフロアや居室を
 用意している訳ではなく、入居者の生活の延長線の中で、6ヵ月を目途に終末に近い状態
 であると医師が判断した場合に、その方の生活空間でそのままホスピスケアが開始される。

 

 


Ⅳ)まとめ・感想
  アメリカと日本では、根本的な大きな制度の違いがあり、その違いを理解することが研修
 のスタートでした。他の参加者と違い、障害者分野での経験の方が長く、介護分野の知識に
 乏しいことが幸いして、説明を受けた事柄を無意識に日本の介護サービスに置き換えると
 いうことを頭の中でしなかったためか、アメリカのサービスやシステムがわりとすんなりと
 頭に入ったように思われます。他の皆さんはとても苦労されていました。
  アメリカでは、すべてのサービスに細かく単価がつけられていて、個人主義やプライバシー
 保護が確立されており、契約やケアプランに基づくケアのみを行うというスタイルが基本で、
 とてもはっきりしっかりなされているなという印象でした。だからこそ、福祉職の地位や
 報酬がきちんと確保されているように感じました。サービスを受ける側も、自己責任で、
 自分の財産を使いサービスを受けるためか、かなり高齢な方々も自立度がとても高いよう
 に思われました。そこに、日本との大きな差を感じました。しかし、その半面、日本的な
 情や思いやりで行うケアプラン以外のケアが全くないことに、少しさみしい気持ちがしま
 した。こんなことを思っているから、いつまでたっても日本の介護職、福祉職の地位や報酬
 が確立、向上しないのかもしれませんが、それが日本人の良いところなのではと感じました。


参考資料
※視察訪問先一覧
(1)ニューヨーク市高齢者福祉課(行政)
(2)カーネギー・イースト・ハウス(ケア付き高齢者住宅/非営利)
(3)アジアン・コミュニティ・ユナイテッド・ソサエティ(高齢者支援団体/民間)
(4)サンライズ・アダルト・デイ・ヘルス・ケア・センター(デイケアセンター/民間)
(5)サンライズ・アット・ミルベイシン(認知症ケア施設/民間)
(6)ロング・アイランド・ケア・センター(ナーシングホーム/民間)
(7)サンディエゴ市(郡)(行政)
(8)セント・ポール・シニア・ホーム・アンド・サービス(認知症ケア施設他/非営利)
(9)グレナー・メモリー・ケア・センターズ(認知症ケア施設/非営利)
(10)ネイバーフッドADHC(デイケアセンター/非営利)
(11)コロナド・リタイヤメント・ヴィレッジ(ケア付き高齢者住宅/民間)
(12)レミントン・クラブ・ヘルスケア(ケア付き高齢者住宅他/民間)

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